自己都合にせよ会社都合にせよ、失業中の求職活動を経済的な面から支援するのが雇用保険制度の「失業等給付」です。
その失業保険ですが、支給開始前に再就職が決まり、もらえなかったら損なのでしょうか?いえいえ、そんな人のために「再就職手当」というものがあります。
この記事は
・「再就職手当」をもらうための条件は?
・再就職が決まった後、どれくらいで手当てをもらえるの?
・「再就職手当」をもらった後、また退職したらどうなるの?
こんな疑問を解決する内容となっています。
「再就職手当」とはどんなものなのか?
失業給付とは「求職者の再就職を支援」するための給付です。つまり1日でも早い再就職を金銭的に支援し、ハローワークは実際の就職活動を支援します。
ハローワーク(国)としても、いたずらに失業期間が長引くより、早くの再就職を望むわけです(求職者本人もですが・・・)。
そのため(と国は言いませんが)、受給期間の半分以上を残して再就職した方に「再就職手当」が支給されます。いわば「再就職祝い」のようなものです。
「再就職手当」をもらうための条件
「再就職手当」を受給するためには、いろいろな条件があります。自己都合で退職するなど「受給制限」の付く方と、会社都合など本人の望まぬ離職をした方では、若干条件が異なります。
共通の受給要件
まずは会社都合・自己都合の違いに関わらない、共通の条件を説明します。
①支給残日数が3分の1以上ある
失業給付日数は離職前の勤続年数や、離職時の年齢で決定されますが、その日数の未受給日数(残日数)が3分の1以上あることが条件です。
②待期期間を満了している
失業保険では、受給手続きをしてから7日間の「待期期間」があります。これはハローワークが失業状態の確認をする期間と言って良いでしょう。この待期期間もしくは、それ以前から再就職が決まっていたら、再就職手当は受給できません。
③再就職先が前職の会社やその関係会社ではない
当り前の条件ですが、再就職先の会社は「就職した者の前職の会社と関係が無い」旨の証明書を交付しなければなりません。
④雇用保険の被保険者として1年以上勤務する見込みがある
再就職先で正社員などとして雇用保険に加入して、1年以上勤務する見込みがあることが条件です。つまり1年以下の有期雇用の場合は、受給要件を満たしません。
⑤過去3年以内に「再就職手当」「常用就職支度手当」の支給を受けていないこと
つまり「再就職手当」を受給した場合は、その後3年間は再度「再就職手当」を受給することができません。
給付制限(自己都合などによる退職)のある場合の条件勤務する
自己都合退職などの場合、7日間の待期期間終了から2か月間(令和2年9月30日以前の退職の場合3か月間)の給付制限があり、その間は失業給付を受けられません。
このような給付制限がある人の場合、先ほどの条件に加えてもう一つ条件が付きます。
⑥給付制限期間の最初の1か月の就職の方法
ちょっと謎ルールなのですが、給付制限がある方は最初に1か月の就職は「ハローワークの紹介による就職」か「職業紹介事業者の紹介」による就職でなければ、「再就職手当」を受給できません。
ここでいう「職業紹介事業者」とは、例えば担当者が対応するなどの斡旋事業者で、ネットのみで完結するような紹介会社ではダメなようです。
早期の就職を後押しする(と私は解釈している)ための「再就職手当」に、ちょっとそれを阻害するような要件に思えますし、なんとも疑問が残ります。
「再就職手当」の受給手続き
晴れて再就職が決まり、「再就職手当」の受給要件をクリアしたなら、その受給申請をハローワークで行わなければなりません。必要な書類等は下記のものです。
・失業認定申告書
・雇用保険受給資格者証
・印鑑
再就職が決まった場合、最初の就業日の前日にハローワークへ行きます。窓口で再就職が決まった旨を伝えますが、これを「就職の届出」と言います。
もらうだけじゃなく、就職も伝えるのね。
そうなんです。貰うことだけじゃなく、前向きなこともハローワークへ伝えるのです。
この手続きを行い、再就職手当の受給要件を満たしていると「再就職手当支給申請書」をもらえます。この段階では受給が確定していません。
「再就職手当支給申請書」には事業主の証明欄があり、再就職先の会社に記載してもらい押印してもらう必要があります。この際、証明欄の雇用の見込みを証明する欄はよく確認しておきましょう。
もし「雇用期間」がありの場合は、雇用見込み期間が1年未満だと受給できません。「再就職手当」が受給できないのは、残日数が足りないケースの次に多いケースです。
書類が揃ったら後は所轄のハローワークへ持っていくか郵送するか、いずれかで手続きは終了です。
手続き後、どれくらいで受給できるのか
「再就職手当」を申請してから受給できるまでの日数ですが、おおむね1か月程度です。
今年はコロナの影響で失業給付の事例が多いようですが、知恵袋などの回答で「2週間くらいで受給できますよ」などという無責任な回答を目にしますが、そんなことはありません。
最近は質問への回答も簡単には信用できませんね。
ホントにそう思います。昔に比べ”質の低い”適当な回答が多いですよね。
つまり最短のケースだと、待期期間(7日間)が終わる→就職が決まる→再就職手当の申請→手当ゲットまで、40日間くらい要します。
もし「再就職手当」をもらった後、退職したなら・・・
「再就職手当」の受給要件で「1年以上勤務する見込みがあること」とありましたが、もし再就職先を「再就職手当」受給後すぐ退職したらどうなるのでしょうか?
「返還しなきゃならないのか?」と思われるかもしれませんが、もらった「再就職手当」は返還しなくても良いのです。
しかし不幸にも再就職先をすぐ退職した場合、再度失業給付の支給を受けられますが、「再就職手当」の受給相当の日数は消化した扱いとなります。
これって意外とあるケースで、特に早く就職を決めたいというマインドは、いわゆる”ブラック企業”へ迷い込む可能性が高まり、結果として早期の退職に繋がります。
しかし合わない企業への執着は無用ですし、精神衛生上よくないので「再就職手当」のことは考えず自分の身を守りましょう。
まとめ
今回は「再就職手当」に限定して解説してきましたが、結論から言うと「再就職手当」は”再就職お祝い金”です。
早期に再就職し「お国のために貢献」したのですから、正々堂々と受給申請しましょう。その際はこの記事でお知らせした注意点を再確認してください。
この記事を見てくださった方の今後のご多幸をお祈りいたします。