中小企業の事務職は「何でも屋」と言っても良いでしょう。やるべき仕事は多岐にわたります。そんな中で総務・労務のお仕事も沢山ありますが、住民税について少し掘り下げて解説していきます。
この記事はズバリ!
★住民税の手続きって?
★どうやって住民税は決まっているの?
住民税って何なのか?
日本において個人に課される税金は色々とありますが、個人の所得に対して課される税金は国税たる「所得税」と、地方税である「都道府県民税」「市町村民税」です。
その「都道府県民税」と「市町村民税」を総称して「住民税」と言っています。ではその「住民税」ってどんなものなんでしょうか?
総称して「住民税」って言うのですね。あまり意識したことがありませんでした。
無理もないですよね。都道府県と市町村の税金が”一緒”に引かれてますから。
住んでいる場所で違う「住民税」
先ほどふれたように「住民税」と言っているのは「都道府県民税」と「市町村民税」を総称した名前です。そんな住民税ですが、世帯に対して一律に課される「均等割」と所得に対して課される「所得割」の2階建てとなっています。
国税たる「所得税」は全国民平等に課されています。一方「住民税」は住んでいる場所で違うんです。
それも色々と事情があり、例えば日本一「市町村民税」が高い所は、あの”財政破綻”で有名な夕張市です。ですよね。結局のところ“責任をとらない”市長を選んだ住民がケツを拭くのです。
「住民税」は何に課税されるのか
先ほど言った「均等割」は”住んでいる”だけで課税されるので触れませんが、「所得割」は稼ぎに応じて課税されます。
では「いつの所得?」というと前年の所得に対して課税されます。つまり前年に猛烈に稼いで翌年無職なら地獄です。
昔のように、定年退職でスパッと引退されると翌年「住民税」で大変だったと聞きますね。
源泉徴収され、ある程度「現在進行形」な所得税とは違い、「住民税」は後から徴収なんです。
住民税の納付方法
住民税の支払い方は2種類です。ひとつは各個人に送られてきた納付書で支払う「普通徴収」と、給与支払者(会社)が給与から引いて支払ってくれる「特別徴収」です。
この2つですが、「特別徴収」だと年税額を12分割して支払うのに対し、「普通徴収」の場合は4分割で支払うことになります。トータルは同じでも「普通徴収」だと一回の支払額が大きく、どうしても”負担感”を感じます。
我ら事務方は当然「特別徴収」に関する業務を行います。
事務方が行う「住民税」の業務
「住民税」の「特別徴収」に関する業務ですが、ひとつは毎月従業員の給与から「住民税」を控除して納付する業務と、あとは入退社に伴う届出や年末調整後に行う報告業務になります。
毎月行う”控除”と”納付”
住民税の特別徴収ですが、新年度の住民税は6月の給与支給時に控除する分からスタートし、翌年5月の控除までの12回で終了します。
会社へは各市町村から個人へ配布する「住民税の課税明細」と、各自から徴収すべき税額の明細と納付書が送られてきます。
毎年5月中には各市町村から会社へ、これらの書類が届きます。
従業員から徴収した住民税は、控除した月の翌月10日まで納付します。これは源泉所得税と同じです。作業としては単純なのですが給与から控除する金額に誤りが無いよう気を付けましょう。
従業員の入退社にともなう届出
従業員に変動がなければ毎月住民税を控除して納付するだけですが、誰かが退社したり入社したりすると、それに伴う市町村への届出が必要になります。
従業員が入社した場合
従業員の「入社」といっても新卒の「新社会人」と、中途採用など「前職のある人」では手続きも異なります。
新社会人の場合でも「アルバイト」の範疇を超えるような収入があれば「住民税」が課税されているケースもあるでしょうが、そうでなければ特にすることはありません。
多くの新社会人は1年目に住民税はかかっていません。しかし2年目の6月から住民税が引かれ始めるので、急に手取り金額が少なくなるのです。
前職があって「住民税」が課税されている人の場合は、「普通徴収」から「特別徴収」へ切り替えるための手続きを行います。たまに円満退職で転職し、前職の会社で次の会社での「特別徴収」への切替手続きをしてくれていることがありますが、正直稀なケースです。
手続きを行うために、入社した方から「住民税課税決定通知書」を提示してもらい、市町村へ「特別徴収への切替依頼書」を提出します。市町村によっては電話連絡だけで済む場合もあります。
「特別徴収」への切替ですが、「普通徴収」の納期限が過ぎた税額は切替が出来ませんので、それについては本人に納付してもらいましょう。
従業員が退職した場合
従業員が退職した場合は「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を市町村へ提出します。
記載内容は退職した従業員の個人情報と、何月分まで住民税を控除したか記載し、徴収済税額と未徴収税の金額を記載します。また次の会社で特別徴収を継続する場合は、その会社についても記載しますが、関連会社でもない限り記載することはほぼ無いでしょう。
会社がこの届出をすることで、退職した個人へ改めて納税通知と納付書が送られてきます。
退職が1月以降の場合、市町村側としては「残りの未徴収税額」を一括して控除してもらいたいようですが、それについては退職する本人と相談のうえ決めてください。
給与支払報告書
「年末調整」の業務の一部ですが、年末調整を終え給与の年間支払額が確定したら、翌年1月末日までに各市町村へ報告を行います。
市町村へは「総括表」と「給与支払報告書」を提出しますが、「給与支払報告書」は住民税を”特別徴収するもの“と”しないもの“に分けて提出します。
総括表
市町村へ報告する書類の「かがみ」部分が「総括表」です。給与支払者の情報や届出人数などを記載します。
提出先市町村によって若干書式は異なりますが、記載すべき内容はほぼ同じです。事業所名・事業所所在地・代表者名・連絡先電話番号・経理責任者・事業内容・給与支給日・所轄税務署・・・などです。
また報告人数欄には、「特別徴収する人数」「普通徴収する人数」とその合計です。
給与支払報告書
手書きの源泉徴収票であれば、複写式の最初の2枚が「給与支払報告書」です。つまり「源泉徴収票」と同じ書式です。
確定申告をしない「年末調整」だけで年間所得が確定する会社員は、この「給与支払報告書」の提出によって翌年度分の「住民税」の課税が決定されます。
なんか「勝手に課税されている」ような感覚になりますね。
たしかに自分で確定申告をする必要がない分楽だけど、知らないところで税金が決まっているような気はします。
この報告書ですが「特別徴収する人」と「普通徴収する人」の分けて提出しますが、この「普通徴収する人」はどんな人なんでしょうか?主なケースは次のとおりです。
- 他の事業所で特別徴収している人(乙欄該当者)
- 給与が少なく税額が引けない人(年間給与支払額100万円以下)
- 給与が毎月支払われない人
- 退職者または退職予定者(その年の5月末日まで)
これらに該当しない限りは原則「特別徴収」する人となります。最近は各市町村とも特別徴収に力を入れているようで、特別徴収していない事業者へ再三通知を出しています。
まとめ
事務方がやるべき「住民税」に関する業務を解説してきました。業務としての難易度は高くはないものの、従業員数に比例して作業量も増える業務です。
特に従業員が多く、入退社も多い会社では大変な作業になるでしょう。事務職の仕事は「間違わなくて当たり前」なので、しっかりとチェックを行い確実な仕事をしましょう。
知識を増やし、よい事務職人生を送ることを期待しております。