昔は就業規則で禁止されていることが多かった「副業」ですが、最近の傾向としてはそれが認められ、国としても推奨するような方向に進んでいます。
そんな「副業」は当たり前に利益を出すことを目的にやるわけです。そして利益を出せば必ず「所得税」の問題に直面します。どうするのか?
この記事は
★「副業」の所得って?
★確定申告の仕組み
こんな疑問を解決する内容となっています。
会社員と所得税
会社員として働いていると給料から毎月控除されている「源泉所得税」と、12月に「年末調整」で還付(もしくは追加)される所得税くらいしか意識することはないでしょう。
これは「確定申告」することなく、給与支払者(会社)が年税額を計算して毎月控除した所得税との差額を調整してくれる、いわゆる「年末調整」で全てが完結しているからです。
会社員が確定申告をするケース
何事も無ければ会社員にあまり縁のない「確定申告」ですが、する必要がでてくるケースもあります。それはどんな場合なのでしょうか?
医療費控除や寄付金控除をうける
1年の中で多額の医療費を支出した場合や特定の寄付をした場合は、確定申告をすることによって税金の還付を受けられます。これらは「所得控除」といって課税される所得から引かれるものです。
課税所得から控除されるということは、収入(所得)が高く税率の高い方ほど「お得」になるわけです。
税率による差ってなんですか?
例えばたくさん医療費が掛かって20万円の所得控除を受けられる場合、所得が低く5%課税の人だと(20万円×5%)で1万円税金が安くなりますが・・・
そっか!税率が高いほど安くなる税金が増えますね、確かに。
「医療費控除」は年間にかかった医療費のうち、10万円または所得の5%の少ない金額を超える部分が「所得控除」されます。
また「寄付金控除」は国や地方公共団体、社会福祉法人や国の認めるNPO法人に対する寄付金のうち2千円を超える金額(ただし総所得金額の40%まで)が「所得控除」されます。
何かと話題の「ふるさと納税」制度も「寄付金控除」の延長で、所得税の「所得控除」に加え住民税から直接税額控除される“お得な”制度です。
住宅ローン控除をうける
もう長年続いている「住宅ローン控除」ですが、住宅ローンの残高に応じて「税額控除」を受けられるとっても大きなものです。
住宅を取得し6か月以内に居住の用に供した年分から控除を受けられます。その最初の年の分は確定申告が必要となりますが、会社員であれば2年目以降は「年末調整」で控除を受けることができます。
その他のケース
年間の給与収入が2,000万円以上の方は年末調整を受けられず、確定申告をしなければなりません。また2か所以上から(同時に)給与を貰っている方も確定申告が必要となります。
災害や盗難により損害を受けた場合は「雑損控除」や「災害減免額(税額控除)」を受けられる可能性がありますし、株式投資による損失も確定申告をすることによって翌年以降の投資利益から損失を控除することが出来ます。
また不幸にも年末を待たずに離職してしまい、年内の再就職が叶わなかった場合は確定申告をすることで税金の還付を受けられる場合があります。
そして今回の主題である「副業による利益を上げた場合」も確定申告が必要な可能性があるのです。
確定申告が必要な「副業による所得」とは?
一口に「副業」と言っても多種多様なものがあります。一時の勢いはないとはいえ「YouTube」のよる収入や、コロナ過において悪名を馳せた「転売」なんかも立派(?)な副業です。
ブログによるアフィリエイト収入も当然そうなのですが、申告が必要な基準というものが存在しています。その基準とは・・・
「副業の所得が20万円以上!」
というものです。つまり「ブログで頑張っても、月の収入が数千円」なんてレベルなら確定申告は必要ありません。そうそれは「副業」ではなく「趣味」の範疇なんです。
「所得」とは?収入と所得の違い
さきほど「所得が20万円以上」と書きましたが、この「所得」とは何なのでしょうか?簡単に言うと「純利益」です。
例えば「転売」の場合、何かを転売して収入になるわけですが、それを売るために仕入をしなければなりませんし、発送のための経費や事務費も掛かるでしょう。それら「売るために掛かった経費」を収入から引いた残りが「所得」になります。
経費とはどこまで認められるのか?
「経費」という言葉は会社勤めをしていると耳にすることは多いのですが、いざ自分の「副業」の確定申告をするときどこまでが「経費」として認められるのでしょうか?
何かを売るための”仕入”などは「原価」と言って100%が経費となります。ただ気を付けなければならないのは、ある商品を100個仕入れて60個売れた場合、原価として経費計上できるのは60個分の仕入れ代金です。
残りの40個分の仕入れ代金は”売れたとき(年)”の経費となります。会社などで「棚卸し」と言われる作業は、この「まだ売れていない経費算入できない物」の数を数える作業です。
「棚卸し」ってやらされていたけど、そんな意味があったんですね。
「棚卸し」をしないと正確な利益が分からないのです。
原価以外の経費ですが、基本的には「その収入を得るために要した費用」が認められる範囲となります。この経費か否かの境目の判断が難しいところで、特に個人での経費には多かれ少なかれ”プライベート”なものが含まれます。
ブログで旅の記事を書くとして、そのための旅行費用が100%経費として計上できるかといえば「無理!」というのが実情です。税務署目線で言えば「お前、個人的にも楽しんでたじゃん!」ということになるのです。
個人の事業で100%経費算入と言うのは中々難しいですし、案分して経費算入しておくと税務調査でも否認されづらくなります。
これは旅費に限らず全てに当てはまり、それぞれについて「これは副業のための部分は60%くらいかな?」と経費計上の根拠を考えておく必要があります。
いざ確定申告!
無事(?)副業による所得が20万円を超えたらいよいよ確定申告です。では確定申告はどのように準備し、どのように行えばよいのでしょうか?そこを解説していきます。
確定申告に備えた日ごろの準備
会社員の「副業」といっても種類はたくさんあります。しかし、そのほとんどは確定申告するとき「雑所得」という所得分類になります。「雑」とは嫌な感じですが、会社員の副業は「事業所得」にはなり得ないので「雑所得」です。
「事業所得」と違い「雑所得」の場合、赤字などになっても他の所得から引くことは出来ないのです。
ずいぶん扱いが違うんですね。
「事業所得」と認められるハードルは結構高くて、本当に”本業”と言えるような規模・責任が伴うものでなければなりません。
しかし「事業所得」と同様の収支計算を行っておく必要があり、収入の把握は当然ですが、「経費」になりうる支出の領収書や請求書・納品書は捨てずに保管する習慣を身につけておきましょう。
また支出内容は時間が過ぎると忘れがちになるので、領収書などを紙に張り付けそこに経費算入の根拠となる理由などを書いておきましょう。
収支計算書を作ってみよう
確定申告書には「雑所得」の「収入」と「所得」だけを記載するのですが、その元になる収支計算書を作っておきましょう。
「収支計算書」と聞くと大げさなものを想像しますが、収入一覧と分類わけした経費を書いて、差し引きした「所得」を計算できていれば書式に拘る必要はありません。
手書きの簡素なものでも構いませんが、くれぐれも捨てずに保管しておきましょうね。
「事業所得」と違い「雑所得」の場合は収支計算書の提出は必要ありません。ただ税務署からの問い合わせや調査の場合、所得計算の根拠が必要になるので「収支計算書」は簡単なものでも作成し、領収書などと一緒に保管しておきましょう。
確定申告のやりかた
確定申告と言えば昔は手書きの申告書を作成し税務署まで足を運んだものですが、今はスマホなんかでも確定申告をすることができます。
とはいえスマホやパソコンで電子申告するためには事前に税務署へ届出をする必要があり、毎年確実に申告をする必要がある人以外には若干面倒な手続きです。
私の経験上、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成・印刷し、それを所轄税務署へ郵送するのが一番簡単な方法です。
入力は説明通りに進めていけば難しいことはありませんし、用意するものは本業である会社員としての「源泉徴収票」と自分で作成した副業の「収支計算書」だけです。
入力後印刷して添付書類を貼付したら完成です。添付する書類は「源泉徴収票」と、個人番号(マイナンバー)に関する証明書類です。
ちなみに”税務署へ行ってみたら”どうなの?
普通の会社員をしていると税務署なんぞに行くことはないでしょう。せっかくの機会なので税務署へ足を運んでみるのも良い社会経験かもしれません。
毎年「確定申告」は2月16日から3月15日まで税務署で受け付けています。行ってみると分かりますが、非常に混んでいて今どき避けるべき「密」な状態です。
昔会計事務所に勤務していたころ税理士会の応援業務として税務署の「確定申告コーナー」へ何度か手伝いに行ったことがありますが、正直な感想として「来なくてもいいお年寄り」が年金の源泉徴収票を握りしめ押寄せてくるイメージでした。
昨今の感染症を考えると、いい機会ではあるものの税務署に行くのは見合わせたほうが良いでしょう。
まとめ
ほとんど毎年「年末調整」で済んでしまう会社員ですが、副業で一定の所得があった場合は「確定申告」が必要ですし、住宅購入など税の還付を受けられる場合も損をしないよう「確定申告」の知識は身につけておきましょう。
普段は意識することは少ないのですが、確定申告を通して”税”を知り、国や地方公共団体の税の使い道に興味を持つことも、社会人として大きな成長となるでしょう。