よく北国の車選びで「4WDは必須ですか?」なんて質問があって、それに対する答えは様々です。
4WDの車とそれ以外の車では、それぞれメリットとデメリットがあるのですが、それを知らずして他人の意見を鵜呑みにすべきではありません。
この記事では、30年以上にわたり北海道の冬道を走り続けたオッサンが、4WD車が必要なのか否かについて考察します。
北海道の冬道で駆動方式によるメリットとデメリット
北海道(札幌市)に住んでいると、11月にはスタッドレスタイヤを履いていて、それが翌年の4月までホントに長く続くのです。
今まで北海道の冬をミッドシップとRRを除く駆動方式で乗り切った身としては、それぞれに色んな感想を持っていて、その経験から語ることにします。
あらかじめ言っておきますが、どんな駆動方式でも冬道は走れるのですが、それぞれの特徴を知ることが安全への近道です。
発進するとき苦労しない4WD
ある調査によれば北海道で売れている車の約80%は4WDらしく、北海道生活の定番とさえいえる存在です。
4WD車で感じられる最大のメリットは、4輪にパワーが分散することでトラクションがかかりやすい、つまり発進時にタイヤが空転しにくいことでしょう。
この恩恵はかなり大きいものです。
大昔の4WDといえば「悪路を走行するための駆動方式」だったのですが、普通車に4WDが普及したのはアウディ社の”クワトロ”の功績かもしれません。
それと日本メーカーでいえばスバルの実績も、むしろ上だと言えます。
どうしてスバルやアウディの4WDが優れているのかしら?。
スバルやアウディは、FF車をメインに開発しているけどエンジンを縦置きにしていることが特徴なんだ。
よく知っているな。縦置きエンジンだと、そのままリアへシャフトを伸ばせるし、構造がシンプルに出来るメリットがあるのさ。
北海道の冬道は路面が磨かれたアイスバーンになりやすく、スタッドレスタイヤが普通になってからより顕著になりました。
信号待ちしていて発進するとき、4WDであれば多少雑なアクセルワークでも前へ進むので、他人に迷惑をかける可能性が確実に減ります。
ただ、4WD車は基本的に車体重量が重くなるので、「止まる」という面では不利になることは理解しなければなりません。
昔、物理で習った「運動エネルギーは、質量と速さの2乗に比例する」ってやつです。
冬の事故で多いのは、「4WDだからといって油断」することで、滑り出したときの難易度はむしろ4WDが一番高いのです。
冬道では、「発進しやすく、止まりにくい」のが4WDの特徴だといえます。
ほとんど問題ないがたまにピンチになるFF
フロントにエンジンと駆動輪があるFFは、当り前のようにフロントヘビーな車です。
一昔前までは、その特性からアンダーステアなイメージが強く、極端なFF嫌いから「ハンドルを切っても曲がらない」なんて酷評をされていました。
今日、車検で借りた代車🏎️
どうもFF車の素直じゃないハンドリングは未だに嫌い🥺
まあ、乗らないけど…😑— JUN (@eBFM9CQRs9zV5k8) February 9, 2022
それが現代になれば、FFは最も普通な自動車のレイアウトになり、今では昔感じたデメリットを感じることは(ほとんど)ないでしょう。
このFF車ですが、北海道であっても冬に問題になることは(ほとんど)ありません。
冬道といっても圧雪路とアイスバーンは「違う路面」で、圧雪路ならFFであっても無問題です。
ただ、少し上り坂のアイスバーンだとFFじゃ歯が立たないことがあります。
実は「そんな場面」が多いのが北海道で、それだからこそ8割の方が4WDを選ぶんですね。
ある意味で一番安全なFR
フロントにエンジンを搭載し後輪を駆動させるFRレイアウトは、大昔は高級サルーンの定番でした。
今でも高級車にこのレイアウトが多いのは、前後の重量バランスに優れ、なによりFF車では搭載できない大排気量エンジンを載せることができます。
今でも高級車の多くはFR、またはFRベースの4WDというケースは多いままです。
またスポーツカーもFRが鉄板の駆動方式で、総舵輪と駆動輪を分けることで得られる軽快なドライビングフィールは、一度は経験しておくべき文化遺産だといえます。
今日は久しぶりにハンドル握った
末弟の非力な1.6Lターボの116iだけど
やっぱFRのハンドリングは気持ちイイ pic.twitter.com/daOxMNf7t0— Nobby Sakamoto (@nobby_sakamoto) March 21, 2020
ところで、このFRレイアウトの車ですが、冬道になると後輪の接地荷重が足りなくて中々前へ進めないという事態になりがちです。
特にアイスバーンの坂道では泣きたいくらい前へ進んでくれません。
しかもお尻を左右に振りやすく、危険なようなイメージを持つでしょうが、実は一番安全なのがFRだと思っています。
トラクションがかかりにくいからスピードも出せず、何より滑り始めを手に取るように感じられるので、自然とカウンターを当てられるようになるのがFRです。
私の愛車遍歴の一部と冬道での思い出
運転歴のなかで何台の車を乗り継いでいるのかは、人によって大きく変わるものですが、私は少なめな部類だと思っています。
最初に購入したファミリア・アスティナから、現在乗っているゴルフ・オールトラックまで、約35年間で6台です。
その6台の中からいくつかピックアップし、冬道ドライブの思い出をふり返ってみます。
サバンナRX-7
1990年に新車で購入したサバンナRX-7(FC3S型)は、私が2台目に購入した車で、かなり思い出深い一台です。
若造だった私にしてみれば、かなり背伸びして買ったスポーツカーで、半分車のために働いているようなものでした。
FC対抗紅白音合戦☺ pic.twitter.com/KR58ejdN9l
— Y U – K I 7 (@T_FC3S_RedSuns) January 5, 2024
ボディカラーは赤で、グレードはGT-Xという少しだけお高いやつです。
今にして考えると、新車価格258万円というのは「ずいぶんと安かったよなぁ」なんて思えますが、当時は”清水の舞台から飛び降りる”気持ちでした。
当時はスパイクタイヤが禁止されたタイミングだったので、冬になると弱者になったものです。
あの頃は状態の良いAE86も多く走っていて、フルピンのスパイクタイヤを履いた86が元気一杯にアイスバーンをドリフトしていたのを普通に見ていました。
フルピンスパイクのFR車は、豪快なドリフトをできたのですが、傍から見れば迷惑な存在でした。
しかしスタッドレスタイヤにハイパワーFRの組み合わせは、楽しいものの悲しくもあり、無茶をすれば「即刺さる」というスリルを味わえたものです。
ファミリア
RX-7を2003年に手放し、田舎ならではのことで「車なしでは生活できない」ことから、中古の「赤いファミリア」を買いました。
ちなみに、このファミリアは9代目モデルで魅力の欠片も感じられず、完全に生きるための車だったのです。
悲しい思い出で、あれやこれを色々思い出します。
それまでMT車しか乗っていなかった私は、結果的にこのファミリア以降はATもしくはATのようなDCTしか乗っておりません。
このファミリアと冬の記憶は、運転したことより一冬雪に埋もれさせた結果、ブレーキが錆びついて使えなくなったことくらいでしょうか。
2005年の春には、走行中にギーギーと音を立てるポンコツになってしまい、春になって次の車を買いにホンダの中古車ディーラーへ行きました。
ゴルフⅣ
ポンコツになったファミリアの後の車選びは、とある理由から「輸入車にしよう」と決めていました。
その理由は言いませんし言えませんが、目を付けたのはBMW1シリーズです。
目を付けたのは初代1シリーズの「116i」で、中古車とはいえ250万円は超えていた記憶があります。
それを見に行ったのがホンダの中古車専門店で、私に付いてくれた担当の若いお兄さんが変わっていました。
色々と話をしていると、週末くらいしか車に乗らない私に「それで116iは無駄ですって!」と力強く反対するのです。
これがビッグモーターの営業だったら、「116iなんかより3シリーズの方が良いですよ」とか言っているでしょう。
それはともかくホンダの中古車で担当者がBMWの替わりに強く推してきたのは、BMW傘下になって初代のMINIでした。
残念ながら2ドアモデルは眼中になかった私が難色を示すと、その担当者が次に提案してきたのがゴルフⅣのCLIというモデルです。
このゴルフⅣは、フォルクスワーゲンが高級路線へ舵を切った影響を受けているモデルで、当り前ながらポンコツファミリア乗りの私から見れば「ワオ!」って思いました。
価格は150万円くらいでしたが即決し、翌週から晴れて外車乗りになった私です。
ゴルフⅦオールトラック
2015年に買った中古のゴルフⅣはすこぶる快調かつ快適で、車を乗り換えようなんて少しも思っていませんでした。
そんな時“ふと頭をよぎった”のが「たまに新車を眺めに行こうか」なんていう欲求で、急に盛り上がったことが思い出されます。
最初に行ったのが新札幌にあるフォルクスワーゲンのディーラーで、そこの担当の熱量は超低かったことが印象的です。
ゴルフに試乗してみて、こちらは盛り上がっているのに担当は淡麗でした。
こちらは「新車良いかも」と盛り上がっているのに、その気持ちを汲み取れないのは営業として失格だったのだと思います。
家に帰ってからフォルクスワーゲンの公式サイトを覗いてみると、ゴルフバリアントのクロスオーバー4WDモデルが発売されたことを知りました。
超気になったので、試乗車を検索したところ東苗穂にあるディーラーにあることが分かり、すぐに試乗予約をして行ったのです。
すでに「気分は新車」だった私は、それを見透かしたかのような営業に押されるがまま、その日に契約してしまいました。
これが人生初の4WDだったのですが、発進にほぼ気を使わないだけで大いなる余裕を感じられます。
このような経過を辿ったからこそ、「北国でもFFで無問題」とかいう輩を軽蔑するのです。
北海道で冬を過ごすための車選び
ドライビング人生のほぼ全てを北海道で過ごしていると、冬の運転は避けて通られない”生きるための儀式”のようなものです。
私のようなオッサンですが、北海道の冬を安心して過ごすための車選びと、ちょっとした冬道ドライブのコツを伝授します。
当然のことですが4WDを選べば問題なし
この記事を書いているのは2024年1月8日のことで、今日の札幌はかなり雪が多く完全な冬道でした。
統計データのとおり走っている車の8割は4WDで、これを選んでおけば待ちがないでしょう。
FFで大丈夫なんていう意見は、確かに冬の圧雪路やアイスバーンに慣れている人なら良いのですが、不慣れなら無視すべきです。
冬道で大変なのは発進と停止ですが、4WD車ならその半分は解決できます。
冬道ドライブの注意点とコツ
冬道と言ってもいくつかの種類があって、主なものでいえば「圧雪路」と「アイスバーン」、そして「溶けかけの圧雪路」が要注意です。
絶対に知っておかなければならないのは、冬道での”止まる”ということは、ブレーキ性能とはあまり関係がないことでしょう。
世界中ほとんどの車は4輪のちょっとした接地面で道路と接触していて、滑りやすい冬道では軽い車ほど停止しやすいという、当り前の物理法則が大事です。
イキって事故る4WD乗りのほとんどは、このような基本を忘れた結果の自爆行為としか思えません。
それと発進時の注意の関していえば、とにかく「タイヤが最初の1回転まで滑らないように」という感覚を持つことが大事です。
要は経験と慣れしかないのですが、最初が大事だということだけは意識しましょう。
北国でEVってどうなの?
ホントかどうかは分かりませんが、EUの上流階級の人たちは「脱炭素」とかいう宗教に夢中になっていました。
その成れの果てが「全てをEVにします」とかいう暴論なのですが、あの人たちは下流民のことを一切考慮していないのでしょう。
ところで、北国でEVを利用するかと問われれば、少なくとも今の札幌市ではNOとしか言えません。
よく言われるように、充電ポイントが少なすぎるうえ、賃貸住まいの貧乏人では選択肢にすらなりません。
早くEUの上流国民が雪で立ち往生して、生死を彷徨うような経験をして「やっぱEVじゃダメじゃん!」と思い知ることを願う今です。
まとめ
北国の冬道で4WDが必要なのか語ってきたはずが、途中から少しずれてしまいました。
とはいえ、結論としては「4WDにした方が無難かつ、後悔しません」というのが正直な感想です。
もし北国に住む機会がありそうなら、黙って4WDモデルを選択することが、後悔を避ける最適解だと強く推薦しておきます。